Home > Kanon投稿 > Kanon投稿入選作 > 2009年2月25日 第30回

Kanon投稿

 

Kanon投稿入選作 2009年2月25日
第30回 テーマ『希望(のぞみ)〜未来へつなぐ詩(うた)』

毎月、WEB投稿作品の中から選んだ作品を、『Kanon』お勧め作品としてHP上で発表いたします。
大賞1名 特選3名 佳作10名には、『Kanon』編集部からステキなプレゼントをご用意しております。
※選者の歌人・朝倉富士子氏より、各作品への選評が寄せられたので、賞とともに発表いたします。

大賞
生き甲斐を追う足だから竹を踏む (川柳)神奈川県・草太郎
草太郎さん、大賞おめでとう! すっきりと、よくわかる一句でした。初句からまことに能動的な出だしなので『足だから』という理に傾く表現が逆にすんなりと『…踏む』まで一気にことばが走り、川柳ならではの活発な一句となりました。古希を前にして作者の“これからだ!”という人生への前向きな姿勢が、『生き甲斐を追う』に力強く出ています。
ストレッチなどではなく『竹を踏む』が素朴で良かった。

特選
全身で笑ふ赤子の春帽子 (俳句)奈良県・まりも
結句の『春帽子』…みごとに生きております。とにかく理屈抜きに、この句を読まれた方々のかお頬には明るい笑みがこぼれることでしょう。この理屈抜きというところが良い。ここまで省略できる作句の力を持った作者に心よりの拍手を送ります。これからも良い句をたくさん見せてください。

特選
障がい者の「希望の家」とふ看板に雲をこじあけ冬の陽の射す (短歌)新潟県・抹香鯨
なかなかの目線でした。歌材そのものの特異性もありますが、『雲をこじあけ』の下7音は作者の強い意志の有り処を思わせ、感動いたしました。『希望の家』の看板に吸い寄せられた作者の感覚の優しさ、均衡のとれた精神がつかんだ詩情がとてもすてきです。よくぞ詠んでくださったと礼を申したい一首です。

特選
「目を閉じて」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)東京都・久保真秀

「目を閉じて」

目を閉じてそっと
眠りに落ちるとき
少し先の不安が
頭に浮かんでしまう

大いなる意識の
小さな反逆が
私を恐れに
連れて行く

ただ傍らにいる
あなたの呼吸が
安らかだと


わたしはやっと
未来をかぼそくても
紡いでいけるのだ

『目を閉じて』貴方はなにを感じようとしているのか…。『若い』という文字は『苦しい』という字に似ているのですね。未来は字の通り、未だ来ないものですもの。『大いなる意識の小さな反逆が…』のフレーズは発見でした。これからがいよいよ楽しみです。

佳作
初富士の輝く影の慈愛かな (俳句)山梨県・にむら浩美
縁起の良い歌材とはいえ、結句の良さが十分な輝きとなって秀歌です。『慈愛かな』とは、なんと豊かな日本語なのでしょう。富士山の持つ品格を言い得た表現には、作者の心映えが見えます。

佳作
未来の苗ボクらがそっと育てゆく (川柳)北海道・ちえこ笑
『未来の苗』…それは植物であれ、人間であれ、まだ見ぬこれからの世の中に栄えなければならぬものなので、それを大事に、しかも手を出し過ぎずに…という気持ちは『そっと』に出ていました。

佳作
寝る前に読み聞かせする絵本より子は広げゆく夢も希望も (短歌)大阪府・ひいらぎ
昔ふとんの中で聞いた物語を思い出します。読み聞かせの絵本は、子育てのとても大切なアイテム。想像力が人間らしさを育てることを知っている作者の詠嘆でした。

佳作
「風の宅急便」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)秋田県・GG

「風の宅急便」

花や木から種が
風に運ばれ飛んで行く

運ばれた種が
知らない土地で
新たな命を生む

風が命を運ぶ

風は遠くに居る
愛しい人の噂を運び
近くに居るよと
匂いを運ぶ

風が知らせを運ぶ

もうすぐ風が
春の香りを
運んで来るでしょう

『風が命を運ぶ』『風が知らせを運ぶ』このキーワードは良かった。宅急便は現代らしい発想だが、まさしく言い当てていて納得です。最後のフレーズにはもう少し工夫を…。

佳作
青い鳥対岸にいて古希の春 (川柳)福岡県・じん
じんさん、古希の対岸に青い鳥がいたのですね。その青い鳥は岸を越え、貴方の春へ訪れてきたのでしょうか? いかにも川柳らしいけれど、ほほえましい分だけ品が良い作品です。

佳作
「凪の静寂(しじま)にうつろひて」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)神奈川県・ミチタリル

「凪の静寂(しじま)にうつろひて」

こもれびの傍らで
そっと 手のひら翳していたら
木の葉を誘った優しい風が 
ちらちら 瞳に射しこんで
この手を 振り解(ほど)こうとする

朝凪の静寂で
俯き 涙を拭っていたら
寄せては還す小波(さざなみ)が
いつしか 鼓動に寄り添って
心意を 解き柔(ほ)ぐそうとする

光の行く手に身を委ね
凪の静寂(しじま)にうつろひて
森羅からの言伝(ことづて)を
わたしは ずっと待っていた…

“溜息ひとつ 落とすなら
想いをひとつ 唱えましょう”

“吐息がひとつ 零れたら
願いをひとつ 叶えましょう”

いつのまに・・・

わたしのこころが
そう…呟いている

『こもれびの…』は“木洩れ日の…”と表記した方が、もっと良かった。ことばの運び入れがとても丁寧で叙情性がある。読むほどに、ことばのさざなみの中でたゆたう心の共有を感じます。

佳作
凍る日の隅にきちんと差す薄日 (川柳)静岡県・五貫
いいですねぇ、『きちんと差す薄日』。句またがりしながら結句へ移る『きちんと』と表現した作者の几帳面さ。寒い日に凍る隅に目をそそぐ細やかな心情。私はとても好きです。

佳作
ランドセル背負う姿をおもいつつ郵便局へと雪道をゆく (短歌)新潟県・三浦ユリコ
作者はただ自分の思っていることと行動していることを詠っているだけですが、それがそのまま詩情を伴ってゆらぎます。お孫さんにプレゼントと一言も言わないところが実にいい。

佳作
白梅や他人を思いやる心 (川柳)兵庫県・松下弘美
『白梅や』に続いての連想が、『他人を思いやる心』だと断定したとき、作者は本当の日本のお母さんになれたのだと思う。次の句『反抗期終わり春告鳥となる』も、意味深く肯定したい。

佳作
「無題」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)埼玉県・繭。

「無題」

この木の下が好きでね、
今日も座っているの

私を通り越していく光がね、
毎日少しずつのびてゆく


この木の下で私はね、
いつも夢を見ているの

踊る光を通り越すわ
少しずつ、キョリを縮めて

この木の下から
飛び立つのよ

“この木の下”は作者にとって、心の定位置なのでしょう。安らげる場所・故郷かもしれません。でも飛び立つ日は近いことを知っている作者なのでしたね。

選者からのコメント

おどろきました。皆さんの作品が総体的にありのままをとても素直に、無理をしないで表現しておられることに。特に賞に入った方々の作品のなんと人間臭いこと! これが現代を生きる私たちの詩精神であることは言うまでもありません。
大げさな身ぶりや、知ったかぶりや、嘘っぽさのない、今生きている自分自身に正直に真向かうとき、ことばが詩のリズムを奏でてくれることを確認できた今回の作品でした。

朝倉富士子●あさくら ふじこ

1935年生まれ。福島県出身。1966年歌と観照社に入社。1972年、歌と観照賞受賞。1988年、岡山巌賞受賞。『歌と観照』選者、『きびたき』選者、山形県米澤新聞『米新歌壇』選者。福島県歌人会常任委員、柴舟会会員、日本歌人クラブ会員。1997年第一歌集『天の鈴』平成8年度日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞受賞。著書:歌集『天の鈴』『里の木ものがたり』『日待ち月待ち』『愛しきものの詩』他、古典随想集『今も昔も』他。