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Kanon投稿

 

Kanon投稿入選作 2009年1月25日 第29回 テーマ『聖夜〜クリスマスの詩(うた)』

毎月、WEB投稿作品の中から選んだ作品を、『Kanon』お勧め作品としてHP上で発表いたします。
大賞1名 特選3名 佳作10名には、『Kanon』編集部からステキなプレゼントをご用意しております。
※選者の歌人・朝倉富士子氏より、各作品への選評が寄せられたので、賞とともに発表いたします。

大賞
「サンタクロース」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)鹿児島県・ともみつ

「サンタクロース」

煌めきに挟まれる
星の海と
人の波
小さな輝きの中で
子供は夢を見る
愛しい人へ
神が贈る
小さな結晶
この日だけは
天使の代わりに
サンタがやってくる

22歳の作者の感性はピュアであった。11行の短詩にはことばの無駄がなく、すっきりと感動が伝わってきた。特に『星の海』と『人の波』の煌めきの間に在る子ども達…。天に星、地に愛という聖句を思い出しました。終わりの『天使の代わりにサンタがやってくる』のフレーズは、聖なる夜の意味を深く伝えてくれる人間の匂いが良い。表現の単純化は時として深い心の出口を伴って、抒情することができよう。今後に期待したい。頑張って!

特選
鼻歌の八分音符や冬の朝 (俳句)京都府・上村美翔
『八分音符や』が実に軽快! 『鼻歌』がまた良い。冬の朝のピーンと張りつめた冷気のなかで、何とも明るく、健やかな精神と身体のバランスのとれたハツラツ感が伝わって愛らしい。季語・切れ字など、約束事の定型を守りながらも、全体の印象は古くない。心のおもむくままに、喜怒哀楽の伝わる句を――。

特選
住職とオモチャ売り場で鉢合わせ (川柳)神奈川県・杏花
エッ、ご住職様もクリスマスのプレゼント? オモチャ売場でのひとコマ。いかにも川柳の面白さが生きる『鉢合わせ』でしたネ。すんなりと一句ひねったところがとても良い。宗教の持つ広やかな現代的解釈は人間の世界を心地良いものにしてくれるでしょう。子どもを仲立ちに、幸せ感あふれるクリスマスの一句、楽しく観賞いたしました。

特選
柿たわわ村の真ん中何でも屋 (俳句)青森県・野村英利

こころ憎い一句。何も言わなくてもスンナリと情景が見え、切れ味はバツグンです。『村の真ん中』が、上下の5音をしっかりと引っ張り、イメージが豊かに広がる明るさが良い。柿の実のあの明るい色彩がなつかしい村落の風景に映え、人々の集ってくる何でも屋が郷愁を誘う。的確な表現の力を感じた。一層の精進を期待しエールを送りたい!

佳作
思い出に生きよと後期高齢者 (川柳)愛知県・にゃん
後期高齢者と決め付けられたとき、人はドキリとする。そして「思い出に生きよ…」と言われたら、「そりゃあないよ!」とブーイングが聞こえてきそうです。川柳の妙味を感じる切り口です。「思い出もいいけど、人間は生きてるんだよネ…」と。

佳作
均等にブッシュ・ド・ノエルを切り分けるきこりのような父の眼差し (短歌)京都府・麻倉遥
しゃれた歌材!です。下句の『きこりのような』の比喩が生きている、父の眼差し。まだお若い作者の素直な感性がいきいきとした表現につながりました。初句の『均等に』の漢語が菓子のカタカナ名をきっちりと生かし、短歌の音律に乗り切っている良さ。温かい一首です。

佳作
巣立つ子の尽きて二人の聖夜かな (俳句)兵庫県・松下弘美
中句『尽きて』と下句『聖夜』。この句またがりの効果的表現がうまい。『尽きて』は実に感慨深い表現で、全体を十分に引き締めている。――そして二人きりの聖夜は来たのでした…。その時人生の深さを感じつつ、作者の聖夜は甦るのです。

佳作
どの絵本幼き子らへ贈ろうか迷っています聖夜ちかき日 (短歌)新潟県・三浦ユリコ
幼き者へ送る絵本を選ぶ作者の心は、どんなにか喜びでふくらみ、あれこれ迷う――。うれしい迷い。すんなりとできた一首の良さ! 口語表現が生かされながら、結句の『聖夜ちかき日』と名詞止めで一首を締める技巧があった。

佳作
「夢」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)東京都・久保真秀

「夢」

つらつらと考える
私は夢の中で
ただこの世だけが確かだと
言っていた

もしもそれが本当なら
夢の中が確かなのだろうか
それとも起きている今が
確かなのだろうか

この世とあの世は
眠りによってつながれている
私は渡し守にチップを払い忘れたか

起きた時に確かだったのは
この日が12月25日で
高らかに天使がラッパを吹いたことだけだ

若い作者はいつも思索する。彼女の詩には、時間を立体的に把握し表現しようとする意志を感じる。詩人には大切な素養であります。最後のフレーズ『起きた時に確かだったのは…』と結論の断定的表現が詩に厚みを添えて良かった。

佳作
ゴキブリも追わずにおこうクリスマス (俳句)愛知県・西谷清志
追わずにおこう…のポジティブな7音の中の句で、ゴキブリとクリスマスの組み合わせを可能としたのは見事。やや川柳に近いと誤解されそうだが、暮らしの底辺にある感覚は小林一茶の情緒を思わせ、妙に心にしみて良い。

佳作
次女もまたさらりと他人の姓になりイヴの渋谷に消えて行きたり (短歌)新潟県・抹香鯨
『次女もまた…消えて行きたり』の初句と結句の整合性。『さらりと他人の姓になり…』がまた実感を伴い、なんとも切ない親心が伝わる。事実のみを淡々と詠みながらも訴求力は強い。過不足の無い表現は佳でありました。

佳作
街路樹がイミテーションの星纏う夜しんしんと冷えてゆく指 (短歌)東京都・林 由実
『イミテーションの星…』と街路樹の電飾をすっぱりと言い切って、冷え冷えとした冬の夜を表現し切った。樹の花と見立てず、星としたところがクール。現代的ともいえます。

佳作
時の経つ早さが老いの背なを押す (川柳)三重県・大川 勲
年齢を重ねてからの時間。何と遠く、重く追ってくるのか。そんな思いが川柳に投影されており、佳作となった。若者の時間は華やぎ、人生終盤は沈金の輝き。いずれにも美学があり、すてきだ。少し湿度のある川柳も魅力的です。

佳作
マリア様見たくないですリスとトラ (川柳)東京都・なほぱぱ
何となんと、“リス”と“トラ”。聖夜のマリア様に訴えたい現代の人間界のかなしい営み。『見たくないです』とは、人の力が及ばない程にふくれあがってしまった智力の果ての落とし穴のひとつ、リストラでしょう。リスとトラは軽妙な皮肉となりました。

選者からのコメント

面白いもので、近代文芸4つの部門それぞれに好調・不調の波は交互にやって来ます。選者は、その波乗りをするようにして選をしながら、つくづくと思うのです。時代・季節・性別・世情などの外的要因による心の動きとことばとの相関関係の面白さを…。ただ、いずれにしても、心が何をとらえて表現されるかは、自分自身そのものの在り様ではありますね。よく見、聞き、そしてわかる…宮沢賢治でなくても、そこが大事と思います。

朝倉富士子●あさくら ふじこ

1935年生まれ。福島県出身。1966年歌と観照社に入社。1972年、歌と観照賞受賞。1988年、岡山巌賞受賞。『歌と観照』選者、『きびたき』選者、山形県米澤新聞『米新歌壇』選者。福島県歌人会常任委員、柴舟会会員、日本歌人クラブ会員。1997年第一歌集『天の鈴』平成8年度日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞受賞。著書:歌集『天の鈴』『里の木ものがたり』『日待ち月待ち』『愛しきものの詩』他、古典随想集『今も昔も』他。