Kanon投稿入選作 2008年12月25日 第28回 テーマ『紅葉』
毎月、WEB投稿作品の中から選んだ作品を、『Kanon』お勧め作品としてHP上で発表いたします。
大賞1名 特選3名 佳作10名には、『Kanon』編集部からステキなプレゼントをご用意しております。
※選者の歌人・朝倉富士子氏より、各作品への選評が寄せられたので、賞とともに発表いたします。
大賞
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| 懐かしき人を月日を思い出す紅葉落ちくる結願の寺 |
(短歌)東京都・久保親二 |
| おめでとう! 結願(けちがん)の寺…の結句がとても効いています。上句の句またがりながら、「人を」「月日を」の“を”の助詞によって思い出すものが重層となりました。地味な表現ながら、静かに人生の過ぎ越しを納得していく言葉の斡旋がよかった。下句の「落ちくる」と「結願」の「ち」音の繰り返しが、くぐもる音律となり、一首の内容を深いものへと導く効果を果たしており、いかにも短歌らしい作品でした。また良い作品を見せてください。 |
特選
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| 初紅葉奥に金堂ありにけり |
(俳句)鹿児島県・かずみさん |
| すてきな句です! 真っ直ぐに心へ響いて参りましたよ。中句の「奥に金堂」と納めた力量に拍手です。初紅葉はまだ若い染まり具合ですから、金堂が重々しく感じられます。絵画の遠近法のように誠に立体的に季節感やら、情感やらをかもし出し、佳作となっております。感覚が若々しい。結句「ありにけり」が妙味でした。 |
特選
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| 風に舞う紅葉これから一人旅 |
(川柳)静岡県・五貫 |
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うーんと唸ってしまいました。これから一人旅に出るのか、人生の一人旅なのか、いずれにしても風に舞う紅葉と共に冬へ傾いていく季節の中で、川柳がここまで詠え得ることを立証した名句です。お世辞ではありません。良質の詩情と人生観の融合…というと大げさかもしれませんが、この境地を進んでいただきたい——。
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特選
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| イチョウはね星の欠片の形なの病院のベンチ母のつぶやき |
(短歌)徳島県・あいらむ |
| 私の目はいま潤んでおります。お母様の心は何と澄んでおられるのか…。イチョウの葉が黄色に輝くのは星の欠片だから、などと幻想できるのはすてきなことです。ご病気が何であるにしろ、こんなつぶやきのできるお母様をお大切にね。表現的には、上句は話し言葉表現でOKです。下句は、ベンチ“に”又は“の”の助詞を入れましょう。 |
佳作
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| 「赤い山」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる |
(詩)秋田県・GG |
「赤い山」
そんなに燃えんでも
ええじゃろう
命を燃やし散り逝く葉
山が真っ赤に燃えとった
のちに灰が降り注ぎ
辺りを真っ白に
変えるじゃろう
焼けた葉は
肥やしになり
春に命を生むんじゃ
そんなに焼けんでも
ええじゃろう
息吹を起し躍動した葉
山が真っ赤に焼けとった
いまに夕陽が降り注ぎ
全てを真っ赤に
変えるじゃろう
燃えた葉は
記憶になり
冬に命を終わるんじゃ
そんなに照れんでも
ええじゃろう
命を育て成就した葉
山が真っ赤に照れとった
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| 「赤い山」とてもすてき。まず、方言の用い方が良かった。「燃えんでも ええじゃろう」「燃えとった」「生むんじゃ」音律はやさしいのに説得力があるのは、作者の身についた感覚語だから…。力みのないのも良かった。 |
佳作
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| クロロフィル分解されて生まれくる落葉前の新たな色素 |
(短歌)千葉県・楠矢實 |
| この短歌には新鮮さがあふれています。クロロフィル・分解・色素等、短歌ではあまり用いない分野用語ですがそれが佳い。三句の「生まれくる」が歌に命を与えた。結句は、“色素新たに”“色素新(あら)たし”としたいところ。 |
佳作
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| 北条氏滅びし跡や草紅葉 |
(俳句)神奈川県・前川 卓 |
| 草紅葉の結句がぴたりと据わる。滅びし跡には北条一族の盛衰を思わせる秋の風も吹いていたろう。が、草の紅葉は幾世を経てもただ美しく哀しみを誘う。芭蕉の句の夏草や…に似た悲しみのにじむ一句である。 |
佳作
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| トンネルの出口入口蔦紅葉 |
(俳句)福岡県・紙田幻草 |
| トンネルの出口入口とは恐れ入りました。蔦紅葉ですから自在に這い、まるで出入口の飾りとも見える風情の発見が面白い。明るく軽やかさがよく表現され、動作用語なしでも動きが見える佳作である。 |
佳作
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| 物価高モミジカラーのわが家計 |
(川柳)東京都・山柳庵 |
| 鋭い目線がとらえたモミジカラー。恐れ入りました。川柳らしい川柳でした。切れ味バツグンとはこういう句を言うのでしょう。狂乱の時代で苦労するのはまさに庶民の家計です。言い得て妙。今後に期待します。 |
佳作
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| マニキュアを塗った私の手のように色づきはじめの楓が揺れる |
(短歌)京都府・麻倉遥 |
| 現代的で若さあふれる楓の短歌ですね。楓はよく手に見立てられますが、色づき初めの葉の比喩として、マニキュアの美しい自分の手を用いたのは発見でした。「私の手のように…揺れる」と巧みな斡旋が成功している。 |
佳作
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| 「無題」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる |
(詩)高知県・柑橘系 |
「無題」
一歩足を進めて
あのときと同じ景色を眺めた
朱に染まりゆく
君の隣が
あのときと違う何かを見せた
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| 詩としては短い方ですが、おしまいの「あのときと違う何かを見せた」の一行で、この詩は成立しました。詩の心はつきつめると、たった一言の場合が多い。それをあなたは鋭く感じとっていると思いました。 |
佳作
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| 穴が開き沈みそうなる日本丸 |
(川柳)愛知県・にゃん |
| にゃんさんは多作ですね。特にこの一句、現代風刺としていただきました。本当にいずこを見ても秋の夕暮れ…などとのんびりしていられぬ世相です。この穴、何とか塞げませんかね。「木枯らしに唱和嚔が五回出る」も佳。 |
佳作
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| バス停の少女もみじの髪飾り |
(川柳)神奈川県・草舟庵 |
| 何とやさしく美しい川柳でしょう。バス停の少女の髪に舞い下りた紅葉が髪かざりに見えたのか、もみじの形のかざりなのか、いずれにしても、少女の若さにもみじの秋は不思議なハーモニーを感じさせてくれます。 |
佳作
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| 肩すぼめ抜ける公園散り紅葉 |
(俳句)北海道・工藤光吉 |
| 熱心な投稿、感じ入っております。肩すぼめの発句が垢抜けしています。中句で場所を、そして散り紅葉へと続く語調がいい。公園という場所も広がりが見え、効果的。一層の研鑽をされ、佳い句を見せてください。 |
選者からのコメント
短歌・俳句・川柳・詩といずれも少しずつ異なった味わいはあるにしても、これら日本独特の短詩形文芸(文学)は、歴史の連続の延長上にあることをつくづく思います。歴史的遺産である日本語の蓄積が如何に膨大なものであるか、驚くばかり…。それらを現代の文芸(芸術)というものに、生かせないか…。古きは新しきに通ずとも言います。古い言葉を用いて意外な音律の効果が生まれる面白さがあります。言葉も化学反応や融合をする事実にも、目を向けてみましょう。
朝倉富士子●あさくら ふじこ
1935年生まれ。福島県出身。1966年歌と観照社に入社。1972年、歌と観照賞受賞。1988年、岡山巌賞受賞。『歌と観照』選者、『きびたき』選者、山形県米澤新聞『米新歌壇』選者。福島県歌人会常任委員、柴舟会会員、日本歌人クラブ会員。1997年第一歌集『天の鈴』平成8年度日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞受賞。著書:歌集『天の鈴』『里の木ものがたり』『日待ち月待ち』『愛しきものの詩』他、古典随想集『今も昔も』他。
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