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Kanon投稿

 

Kanon投稿入選作 2008年11月25日 第27回 テーマ『実り』

毎月、WEB投稿作品の中から選んだ作品を、『Kanon』お勧め作品としてHP上で発表いたします。
大賞1名 特選3名 佳作10名には、『Kanon』編集部からステキなプレゼントをご用意しております。
※選者の歌人・朝倉富士子氏より、各作品への選評が寄せられたので、賞とともに発表いたします。

大賞
新米の一粒づつの光かな (俳句)兵庫県・松下弘美
パッと心に光が届きました。うれしかった。一粒ずつに光が届く…この感覚の素直さ、そして温かさ。久しぶりにすてきな俳句に出逢えて、本当にありがとう! 暗いことや不安の多かった今年でしたけれど、大地の贈り物の光は、大きな救いです。結句の「かな」で止めたところに力量を感じます。一層の精進を期待しております。

特選
「秋が来る」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)東京都・久保真秀

「秋が来る」

秋が来る 風が冷たくなり
日がとろとろとみじかくなる
箪笥から袖の長い服を
樟脳の匂いを嗅ぎながら出す

おんなの秋はこうやって
くりかえし懐かしさを呼ぶ

日が暮れるまでのほんのりとあたたかい
日差しの中で
懐かしい思い出に浸るような
おんなの
秋が来る

箪笥、長袖の服、樟脳の匂いをきちんと詩の核に置き、季節の移ろいへの感傷を重ねながら、あなただけの秋を抱きしめている。こういう視点がゆったりとした独自性のある詩情を広げ、小さなあなただけの秋物語を語りかけてくれ快い。「おんなの秋」のフレーズ2つのうち前出は“わたしの秋”が良いですね。その方が、最後がきっちりと決まるでしょう。

特選
「無題」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)愛知県・にゃん

「無題」

それよりも財布の中を温める
いきなりに平手で打たれ年の暮れ
騙されて気づかずにいる庶民です
ああそれはいい案ですと追従し
黙っていれば税金ばかり取られます
月の夜は月にくどくど愚痴を言い
バスが着くバスから過去が降りてくる
間違いを指摘をすれば雪となり
大向こうからやって来るのは大先生
馬車馬の人生だった父だった
真夜中では探し物などみつからぬ

…過去が降りてくる。心憎い表現! バスは時間と距離の間を移動し、沢山のドラマを運ぶ…。そんなイメージをすてきに表現してくれました。どんな過去なのか具体的でない分、読者はあれこれと思いを膨らませて楽しむことができましょう。詩の面白さと深さを感じさせ秀作です。

特選
葉の落ちて実りの柿は残りおり廃屋の庭に影の侘しさ (短歌)大阪府・宇多 真
「廃屋の庭に影の侘しさ」で秋の明るさ、豊かさが一気に暗転しましたね。ここが短歌の独壇場と言えるところ。「実りの柿」は「実れる柿」と文法に従う表現が良いでしょう。明と暗、光と影の対比が上・下句の間で動く役割をしているのが「廃屋」で、実に効果的でした。また良い作品を見せてください。楽しみです。

佳作
通学路一際高き木守り柿 (俳句)千葉県・星人
木守り柿…なんと懐かしい呼び名でしょう! それも通学路を見下ろして高々と実をつけている柿の木で…、秋のスケッチを見る気がします。漢字がぞろりとそろうのはいかがでしょう? 「通学路ひときわ高い木守り柿」とするとゆったりしませんか。“い”は音韻の整えです。

佳作
案山子にも実りの秋を感謝する (川柳)香川県・キリマンジャロ
優しい作者の姿が見えて良かった! 秋の実りまでの時間に立ち合った案山子へ率直に思いを寄せた「案山子にも」の“にも”が効果的に用いられたところに好感を持ちます。川柳のソフトな膨らみを思います。

佳作
新米の炊ける香りに誘われて思わず卵ぶっかけ喰らう (短歌)熊本県・釣り吉
下句「思わず卵ぶっかけ喰らう」に拍手。率直な詠いぶりには丸ごとの秋が見えて良かった! 上句「炊ける香りに」は「炊き上がる香に」と文体を整えると“思わず”がすんなりとついてきてすっきりします。一考を。

佳作
「こころ秋色」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)秋田県・GG

「こころ秋色」

喉が渇いたなら
この柿を食べて下さい

一粒だけ実の成った
一個だけの想いです

辺りの静けさに
フッと気付けば
トンボが紅く
木の葉が紅く
夕陽が紅く
心を描く
一粒だけの紅い実

甘いか 渋いか
貴方の想いで
違いますが
この柿で喉を
潤して下さい

一個しか無い
私の気持ちですから

柿に託した、細やかな心象風景が広がって見えます。すてきな詩です。第3節の7行は少し説明のし過ぎかも…。もう少し、フレーズを削ると効果的です。第4節を「貴方の想いのままに」くらいに省略するともっとすてきになります。感性の良さを大切に!

佳作
河原ごと芋煮会なり広瀬川 (俳句)東京都・太田純子
初句の「河原ごと」の5音が良かった。説明をしなくても丸ごとの臨場感あふれる作品で、いかにも川柳らしい切れ味の良さが身上です。下の「広瀬川」の地名指定は賛否の論が出るところでしょうが、私は可とします。

佳作
わが妻の実りの秋のにわかジム (川柳)東京都・ようすけぱぱ
「にわかジム」の結句が効果的に決まりました。何かにと説明のないところが良く、川柳のコツを見た気がします。動詞が無く“の”で連ねただけの名詞の面白さ。読後に残るのは、さわやかな作者の奥さまへの優しい目線でした。

佳作
新嘗のまつりの朝(あした)緋袴をつけ三宝に初穂をそなふ (短歌)京都府・麻倉遥
特殊な歌材が新鮮。稲作民族である日本人を最も意識させられる神事をそのまま詠じています。稔りを感謝する習俗は、世界中にありますが、「新嘗」「緋袴」「三宝」「初穂」の語感からは、日本ならではの品格が立ち上ってきました。

佳作
「たわわ」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)神奈川県・ミチタリル

「たわわ」

茜のなずんだ秋空に
温和な西日が滲むころ

早熟(マセ)た素振りの蜜柑達
頬には未だ 青さを名残し

面映(オモハ)ゆく赤らむ林檎も
恥じらう頬っぺを隠せない

こうして 大人びる君達へ
夕映えは 鎮めるように

未熟な
その頬辺(ホッペタ)を撫でながら言う

間怠(マダル)い季節の移ろいは
その実を熟(ナ)らす機会になると 

撓(タワ)わと満ちし若人よ
実りの秋は もうまぢか・・・

落ち着いた詩です。秋への移ろいと「茜」「蜜柑」「林檎」の稔りの時間を若人の時間に重ね、諄々と諭すようにことばを運ぶ、表記も昔風の良き日本的漢字表現で、一層の重厚さを増す。このような詩があって良いと私は思います。

佳作
ころころん山道上りどんぐりが遠足してる整列してる (短歌)広島県・里
童画を思わせる一首。「ころころん」が動的なオノマトペで効果的。どんぐりを転がり落とさずに「山道上り」と逆にしたところに工夫を感じます。遠足の子等の頭などにも連想できるのがミソ。評価は分かれそうですが、個性を大切にしたいと思います。

佳作
黄金の実りに案山子笑ってる (川柳)佐賀県・古賀由美子
案山子は笑っています。人間と同格のように秋の稔りを喜んでいる案山子なのです。女性である作者の母性的思考によるものでしょう。擬人法の面白さもさることながら、ここに性別の特性を見た気がしました。

選者からのコメント

全作品楽しく拝見しました。「実り」のテーマは、どうしても秋の実りにつきますが、それでもふんばって個性的な表現に止まった方々の作品に“稔り”を見ることができ良かった! 文芸も芸術も、“私の目線”が大切です。私は何を感じたか、何を詠じたかったか、できるだけ率直に、そして飾り語に頼らず、“自分の心からのほとばしり”を大切にして作品化に努めてください。次回もどんな作品に出逢えるか楽しみです!

朝倉富士子●あさくら ふじこ

1935年生まれ。福島県出身。1966年歌と観照社に入社。1972年、歌と観照賞受賞。1988年、岡山巌賞受賞。『歌と観照』選者、『きびたき』選者、山形県米澤新聞『米新歌壇』選者。福島県歌人会常任委員、柴舟会会員、日本歌人クラブ会員。1997年第一歌集『天の鈴』平成8年度日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞受賞。著書:歌集『天の鈴』『里の木ものがたり』『日待ち月待ち』『愛しきものの詩』他、古典随想集『今も昔も』他。