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Kanon投稿

 

Kanon投稿入選作 2010年8月25日
第48回 テーマ『あそぶ』

毎月、WEB投稿作品の中から選んだ作品を、『Kanon』お勧め作品としてHP上で発表いたします。
※選者の歌人・朝倉富士子氏より、各作品への選評が寄せられたので、賞とともに発表いたします。

大賞
ハーモニカ戯れに吹く祖父の息はつとするほど太く長くて (短歌)奈良県・小文

「戯れに吹く」ハーモニカ、それは貴女のおじいさま。あまり楽器の手に入らなかった昭和初期に、ハーモニカは特に男の子にとって、大切なものだったらしい。ハッとするほどの太く長い息で吹く曲は何でしたか? その息づかいからは力強い昭和期の男性像がすがすがと立ち上ってきます。すっきりと一首を仕上げた作者の素直な感性に好感がもてました。まだまだお元気な人生の大先輩であるお祖父さまから、いろんなことを学んでいって下さい。

特選
好きな子にそっと当ててる雪つぶて (俳句)東京都・林 善 隣
なんて愛らしい川柳の一句でしょうか。遠くなったあの日のつめたい雪つぶては、もしかしたら初恋の行為だったのかもしれません。ふり返ってみると、初々しかった自分の心の動きが、懐かしく思い出されて、つい一句となったのかな? 中句「そっと当ててる」に万感の思いがこもっていて、品よく作品が仕上がっております。

特選
末の子の虫かご一杯蝉の殻 (俳句)東京都・橘かおる
遊びにもいろいろあって、ハッとさせられました。末の子は、まだ元気のよい生きた蝉を採集できなくて、じっと動かない空蝉ばかりを集めたのでしょう。そのとき、何となく不思議さをあの軽さのなかから彼は感じたように思います。子どもはとても敏感ですよ。ぬけがらいっぱいの虫かごと、幼子と作者の間に流れていたもの。それが詩なのだ…と思います。名詞止めの結句がすてきな余韻となりました。

特選
「まぁだだよ」天の岩戸の姫となり膝を抱える押入れの中 (短歌)京都府・麻倉遥
なるほど“天の岩戸”あそびか…。天地の神話もこのような日常の中でのあそびごとになれるのですね。天地の夜明けという壮大なドラマには天照大神という姫の神が関わりますが、作者の変身願望なども垣間見た気がします。今、青春まっさかりの作者が、誰の前に扉を開き、輝きを放つのか、そんな事を想像させてくれる。楽しい一首です。「まぁだだよ」「膝を抱える」の表現に貴女の深層心理を見たような気がします。

佳作
『太陽』 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)秋田県・GG

『太陽』

カッパの池に
幽霊屋敷
山で虫取り
川で泳いだ夏休み

そこは
三十年たった今も輝く
大切な私の秘密基地

作者にとって三十年前の大切な「秘密基地」こそが、心に光を、ぬくもりを届けてくれる太陽なのでしょう。四行と三行で組み立てられた詩の単純明快さからにじんでくる作者の人柄はかぎりなく、人々の心を癒す言葉の太陽でした。

佳作
夏の森トトロに出会えるような風 (川柳)大阪府・日野江美
子どもたちに人気の“となりのトトロ”からの発想だが、本当はトトロがいるような森がたくさんあります。風が森の樹々を通って、貴女のわきに届いたとき、フトそんな幻想をする、ある夏の森の中の心あそび…。あそぶ…は足霊(あしひ)が語源だそうですよ。

佳作
蝉時雨ボリューム上げし茜空 (俳句)兵庫県・ふみこ姫
暑い日が続き、西は茜に染まる夕暮れ。「ボリューム上げし」の中句の表現がいっせいに蝉しぐれの暑苦しさを増幅させて、現実感をもって迫ってきます。納得のいく表現が快い。

佳作
「ねえ見てて!」砂埃上げ逆上がりもう何回目?夏の日は暮れ (短歌)東京都・オオルリ
くり返しくり返し逆上がりをする子。このくり返しこそが子どもの心を育てる。彼らは空気感が体感として身につくまでくり返し、やがて大人になってゆく。そんな“あそぶ”意義を日暮れまで付き合ってやれる大人はすばらしい!

佳作
厨まで罷り候雨蛙 (俳句)東京都・古賀一弘
洒脱…とは、この一句のためにあるような…。「罷り候」の中句は、作者の生きてこられた時代の表現としても面白味があり佳。それは蛙だからこそ、厨までだからこその三拍子揃い。ひょうひょうと心はあそぶ、これを俳味というか。

佳作
『夏の朝』 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)滋賀県・永里祐子

『夏の朝』

夏の朝
光を浴びた葉の影に
そっと隠れる 君をさがす

夏の朝
風に吹かれてゆらゆらと
静かに揺れる 君を探す

まるで幼い日のかくれんぼのように
見つけた!と 笑みがこぼれる


育つ命を感じる夏
育った命を頂きながら
育ってきた自分を ふっと 振り返る

そんな魔法のような時間が欲しくて
今日も朝のひかりと共に
葉陰のきゅうりとかくれんぼ

育ちゆくもの…をさがす喜び。育った命を頂きながら自分達の命が育つことを知った喜び。それは魔法かもしれない時間だと思える作者の感覚はピュアです。十四行の詩は、もう少し短く言葉を選び直すともっと素敵になりましょう。

佳作
梅雨豪雨神は何処へお遊びか (俳句)愛知県・西谷清志
自然界のこの頃の理不尽のひとつに各地での豪雨がある。梅雨どきの多雨はしょうがないけど、そりゃないぜ…となげきつつ、神様はどこでお遊びか…と揶揄する作者の俳味にも捨て難い味があり、品格も佳い。

佳作
おんぶする遊び疲れの子が重い (川柳)高知県・市川勲
ぐったりと肩に重い子。遊びの疲れも重さの一部なのだ…というところに川柳らしさが出ていました。上等な一句です。

佳作
たんぼには一本足の案山子ゐて雀が群れてしばしからかふ (短歌)東京都・右田俊郎
“母の呼ぶ声ひびきをり路地裏に子らは遊びを止めてもどれり”のもう一首も佳かった。作者の現状はかなり切迫している…が、「雀が群れてしばしからかふ」の表現に見るゆとり感には澄んだ賢者の心境があるようです。佳かった。

佳作
じいじはねボクのおもちゃのお医者さん (川柳)東京都・小川晃弘
子どもはおもちゃが大切な友人なのですね。未分化の心の中で、対等に向き合えるものだから…。次々にこわれたおもちゃを治してくれるじいじこそ、偉いおもちゃのお医者さん。ヒクヒク小鼻が動く様子が見えるよう。

選者からのコメント

選をしていつも思う。佳い作品と上手な作品の違いを…。どっちを選ぶか。私はかならず素材に向かう作者の心の質に目が向く。器用で、かっこうがよい作品は、読んでいるうちに飽きてくる。“万づ言の葉に心をのせて…”とは何だろうか。どんな素材も、自分自身の心の眼力や触覚を通さないと、個性の輝きは出てこない。今回の作品もそれぞれに感動させられたものを選ぶことが出来、ほんとうに嬉しかった。充分に心あそびをさせてもらえたことに感謝したい!

朝倉富士子●あさくら ふじこ

1935年生まれ。福島県出身。1966年歌と観照社に入社。1972年、歌と観照賞受賞。1988年、岡山巌賞受賞。『歌と観照』選者、『きびたき』選者、山形県米澤新聞『米新歌壇』選者。福島県歌人会常任委員、柴舟会会員、日本歌人クラブ会員。1997年第一歌集『天の鈴』平成8年度日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞受賞。著書:歌集『天の鈴』『里の木ものがたり』『日待ち月待ち』『愛しきものの詩』他、古典随想集『今も昔も』他。