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Tradition

『なだ万』~親しい人と味わいたい初夏の味覚~

ことばの料理店

草木が青々として日も長くなり、出かけるのが楽しい季節になりました。高橋智栄子氏が詠んだ俳句をもとにして、“親しい人と味わいたい初夏の味覚”をテーマに、歴史と伝統の名店『なだ万』の調理長が、『Kanon』オリジナルの懐石コースを作りました。6月1日(月)から6月末日まで味わえる特別なメニューです。

写真/齋藤ジン

Kanonオリジナル懐石コース

期間:2009年6月1日(月)~末日
料金:11,000円(税込み、サービス料10%別)


①前菜②吸物③造り④煮物⑤焼物
⑥酢の物⑦食事⑧デザート


写真は『玉蜀黍釜炊き御飯』。たっぷり入った玉蜀黍の黄色と三つ葉の緑色がさわやかな一品。初夏の薫風が運んできたような彩りと玉蜀黍の甘みが食欲をそそる。『止椀』の赤出汁と『香の物』の盛り合わせを添えて。

料理監修 ● 調理長・上村哲也

1988年になだ万名古屋東急ホテル店入社後、2000年、なだ万茶寮名駅店オープンの調理長を経て、2004年、なだ万日本橋店の調理長に就任。2009年、なだ万名古屋東急ホテル店に調理長として復帰、現在に至る。
「今回の作家さんはおひとりですが、初春から初秋まで詠んだ季節が様々なので、食材を選ぶのに少し苦労しました。日本料理は、季節感が大切です。俳句のテーマと季節感の両方を満たすメニューを考えるのは大変でしたが、俳句によってイメージはどんどん湧いたので、それを表現しました。今回も楽しんでできましたね」

なだ万日本橋店

東京都中央区日本橋室町1-4-1
日本橋三越本店 新館10F
TEL:03-6214-2701
http://www.nadaman.co.jp/nihonbashi/
営業:11:00~16:00、
16:00~22:00(LO 20:30)
定休日:なし

●“老舗はいつも新しい”
伝統を守りながら、食文化を常にリード

なだ万は、天保元年(1830年)創業。店名の由来である創始者・灘屋萬助が、長崎に渡来していた中国の卓袱料理と漢方の心得を生かして開業した、長崎料理がベースの大阪料理の店『灘万楼』によって、大きく開花した。
大正8年(1919年)には、ヴェルサイユ条約の調印のために訪欧した西園寺公望公一行の料理番に、なだ万の店主が選ばれ、名実ともに日本を代表する料理店として、日本の食文化をリードしてきた。『季節を愛し、自然を愛し、心を愛す』。昔も今も変わらない姿勢で、広く支持されている。
2009年3月には航空会社と提携し、なだ万の料理を機内食として提供するなど、画期的な試みも行っている。また、海外にも8店舗が進出。なだ万の料理を世界でも味わうことができる。
日本橋店は2004年にオープン。落ち着いた個室はもちろん、サロン席を配したモダンな空間で味わえる伝統料理で不動の支持を得ている。

日本橋店で特に人気の高い“サロン席”には、4人掛けのテーブル10席をゆったりと配置。奥の棚には、書作品や和・洋ともに趣味の良い小物が飾られており、友人の家に招かれたような居心地の良い空間で、目にもさわやかな初夏の料理を楽しむことができる。


来し方の事ふつふつと花野みち


前菜(左上から時計回りに)
紫陽花チーズ豆腐
海苔菜胡麻浸し
鰹皮炙り 胡瓜卸し 一味 ポン酢
蒸し地鶏 隠元利休和え ナッツ
フォアグラ寿司 才巻芝煮 山牛蒡
鰻白焼燻製揚げ 畳鰯 青唐


 

〈花野みち〉とあったので、花畑を歩いているようなイメージが湧きました。小さい猪口をいっぱい並べて、花畑のなかにいろいろな色や形の花が咲いている様子を表現しました。リキュールで色づけしたあじさいを作ったり、畳鰯でお花の茎を表現してみたり、遊び心にあふれています。彩りが良く、小さくてかわいらしい器で花畑をイメージしました。(上村調理長)

(造り)どうだんの小きざみにゆれ花明り
(吸物)夢さめてなほ薫風の中に居り


造り(右)
鯛 本鮪 間八
あしらい一式


吸物(左)
枝豆摺り流し
鱧葛叩き 水玉人参 梅肉


 

『造り』:山の上など風通しのいい高い場所に咲くどうだんつつじをイメージして、背の高い器に盛る料理を考えました。彩りのある造りに添えた芋茎は木の枝を、撚りにんじんとラディッシュは花を表現しています。『吸物』:新緑をイメージした枝豆のすり流しです。森のなかで見える白い雲を鱧で表現し、花の色合いをしっかり出すため、京にんじんを水玉に切って添えました。(上村調理長)


花鋏たゆたふ心日脚伸ぶ


煮物(手前)
冬瓜スープ煮
海老 帆立 アスパラ 胡麻餡


奥の料理『焼物』(奥)
鮎塩焼 酢取茗荷 たで酢
鰈柚庵焼 リゾットのおやき


 

花鋏をアスパラで表現しました。心に霧がかかっているような、おぼろげなイメージがあったので、冬瓜の上に霞みの胡麻餡をかけました。日脚が徐々に伸びている様子を緑で表現しています。海老で赤い彩りを添えました。(上村調理長)

(デザート)平城山想ふ木苺紅き小径ゆゑ
(酢の物)愚痴る日の真紅もさみし水中花


デザート(手前)
牛乳寄せ 葡萄 木苺 キュウイ パパイヤソース


酢の物(奥)
生蓴菜酢 塩トマト 陸蓮根 黄ピメント 茶巾


 

『デザート』:山道のなかで、いろいろな色が反射している様子です。木苺が映える色合いにするため、牛乳寄せの白、皮ごと食べられるベビーキュウイの緑色、パパイヤソースのオレンジ色など、見た目にも楽しい一品です。『酢の物』:ムース状にしたカラフルなすり流しを固めて四角く切り、ゼラチンの茶巾に閉じ込めました。彩りと食感のある蓴菜を散らしています。(上村調理長)

俳句 ● 高橋智栄子 たかはし ちえこ 1923年生まれ。兵庫県出身。