Home > Kanon投稿 > contribution_message

Kanon投稿

『Kanon』優秀作

 

コンクール

市田柿の『かぶちゃん農園』から冬の贈り物
俳句・短歌コンクール結果発表!

俳句・短歌展示イベント
コンクール

投稿される方へ ―朝倉富士子氏よりメッセージ―

2008年9月より、『Kanon投稿』の選者を務める歌人・朝倉富士子氏。“ことば”を大切にしている朝倉氏の選評は、時に厳しく、時に優しく、投稿者への愛情に満ちていて、大変好評です。毎日着物で過ごす朝倉氏は、袖の下から入る風で季節の移り変わりを感じ取るという風流な面がある一方で、家族の暮らしを守るため、生協の理事としてかつては商品研究グループのリーダーをしたり、消費者運動に関わってきた年月は長く、アクティブな面も持つ方です。熱心に投稿を続ける方、また詩歌を作ったことのない方へ向けて、朝倉氏にお話をうかがいました。

朝倉富士子●あさくら ふじこ

1935年生まれ。福島県出身。1966年歌と観照社に入社。1972年、歌と観照賞受賞。1988年、岡山巌賞受賞。『歌と観照』選者、『きびたき』選者、山形県米澤新聞『米新歌壇』選者。福島県歌人会常任委員、柴舟会会員、日本歌人クラブ会員。1997年第一歌集『天の鈴』平成8年度日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞受賞。著書:歌集『天の鈴』『里の木ものがたり』『日待ち月待ち』『愛しきものの詩』他、古典随想集『今も昔も』他。

―― 初めて詩歌を作るときは、どの形から始めるといいですか?

朝倉  私は決まりごとのない詩から始めましたが、形はあくまでも好みです。なんとなく斜に構えて世の中を見たい人は川柳。川柳はもともと“諧謔”や“風刺”で始まりましたが、現代川柳はおちょくるだけでなく、哲学的なことも盛り込むといいですね。俳句は短い分だけシャープ。単刀直入なタイプの人に持って来いではないでしょうか。情緒や情感を表現したい人には短歌をおすすめします。

―― 詩歌はどうしたら上達しますか?

朝倉  とにかく自分の好きなことを素直に作る。物を書くことは自分自身を吐き出すことで、精神衛生上とてもいいことです。大切なのは、努力して、いかに(歌の)土壌を豊かにするか、種を蒔くか、実ったものをどれだけ育てられるか、そしてそれを慈しめるかということ。蒔いたばかりの種はすぐに芽が出ないし、芽が出ないと花は咲かない。私が短歌を一生の仕事だと思うのはそういうこと。だから、あせらないで地道に作り続け、すてきな実りを手にしてください。

―― 詩歌を作るうえで、心がけるといいことは?

朝倉   “自己愛”を大切にしてください。“他愛”は自己愛の延長にしかないのです。自分を愛せない人は、人も愛せない。まずは、自分を豊かにしたいというところから始めて、人との交わりや学ぶことを覚えましょう。自分を褒めるだけではなく、辛口の批評もしてくれる人を大事にすること。今日はいい作品ができても、明日はわからない。大きな炎でなくとも良いので、毎日毎日の小さな火を大切に燃焼させるつもりで過ごしましょう。

―― 定型のルールはどこまで重要ですか?

朝倉  例えば、俳句にも伝統俳句と現代俳句の2種類があります。季語、切れ字がない俳句はだめという人もいますが、それだけでは俳句は衰退してしまいます。ことばは変わるもの。短歌も、『万葉集』のころから見てずいぶん変わってきました。変わっていないのは人の心だけです。規則にとらわれすぎず、自由な心で作りましょう。

―― ことばの選び方で注意すべきことはありますか?

朝倉  ことばはとても大切。ことばによって慰められもするし、苦しめられもする。私自身、批評するときもことばには細心の注意を払っています。“流しておきたいことばと留めておきたいことば”。この組み合わせが重要です。ことばの選択がうまい人は、ことばに敏感な人ですね。ことばに親しむことは自分の心を見つめることにもなります。

―― 最後に、恥ずかしくてなかなか投稿できない方へのメッセージを。

朝倉  最初は誰でも恥ずかしいの。勇気を持って出してごらん。自分を見せることは自分をわかることなのです。人のことばで自分がわかります。発表することの良さは、自分の思っていなかったことを指摘してもらえる、発見があるということ。勇気を出して前に歩こうよ。時間は止まらないのだから。

写真 / 井出友樹